こっちは被害者なんだよ
猫って、いろんな鳴き声があるんですな。
昨日捕獲したばかりの子猫さん2匹は、一晩中鳴いていたようだ。
そりゃそうだ。
今までは、劣悪な環境とはいえ、兄妹4匹と母親と一緒に過ごしてきたのに、
今は、見たことのない場所。
二匹きり。
狭いケージの中。
それは、鳴くだろうな…と思いつつ、あまりに眠かったため爆睡、
実際にずっと鳴いていたのかはわからない。
黒白のウィンクさんの左目の目やにがすごい。
これ、奥さん、猫の風邪って知ってました?
猫は風邪をひくと、目やにがでるそうですよ、なんか、はじめて聞いた。
住んでいるところの環境が変わったりとかね、ストレスがあると風邪をひくんだって。
鍵しっぽのおさじさんも、よくよく見れば左目が少しおかしい。
「このままだと、ずっとそういった目になってしまうので、目薬か眼軟膏をあげてくださいね」と言われたのを思い出し、暗澹たる気分になる。
だって、顔を見れば「シャー!」って言うし。
どうやって目薬さすのよ…。
外を見れば大雨警報出るくらいの強い雨。
近所の方と連絡を取り合い、本日の捕獲は中止することになる。
てか、あと何匹捕獲するのか、見当つかないときついな…。
次の捕獲の日程が、私が普通に働いているため、なかなかタイミングがあわない。
手術をしてもらうために動物病院のやっている日じゃないとだめなのだが、
動物病院ってさ、水木とか、平日がお休みなので。
これまた知らんかった。
夕方雨があがり、お外にでれば、また近所さんで猫の話。
と、ちかくのおじさま(おそらく70代)から、猫について相談があると電話があった。
4軒先のおうちは、階段をちょっと登った高台にある。
猫の捕獲の時にも訪ねたのだが、基本呼び鈴を鳴らしても誰もでてこないおうち。
夫婦二人で住んでいるのだが、買い物やお出かけも夜に行くのでほとんど会ったことがない。
家族構成も知らなければ、働いているのか、猫に対してどう思っているのかもわからない。
近所付き合いがほとんどない、っていうか私、面識がないの。
むしろ、電話がかかってきてびっくりする。
なんで、私たちが猫のことをやっているって知ったんだろう。
たしか、猫を飼っていたはずだな。
外飼いだから、捕獲するなとかかしら、と近所のおばさまとおうちを訪ねる。
と。
うっそうと茂った広いお庭。
おじさまが出てくる。
「うちにも猫がいるんだけどさ、なんか猫のことやっているんでしょ。うちも手続きしたいんだけど」
手続き。
って、なんの手続き…。
手続きってさあ、すげー人任せ感がある言葉よね。
まあ、同じ町内会だし、えっと、まずは猫のことを聞くかと思うやいなや、
庭に1匹の子猫が飛び跳ねるのをみかける。
!
白地に黒ぶち。
すごーい小さい。
見たことない。
白に黒ぶちって、え、この前の猫好きさんからの写真にも入っていなかった。
「あ、あの、あの子猫、いつぐらいから…」
「ああ、あれはよくわからん」
「外で餌とかやってるんですか。」
「そうだよ、こっちは被害者なんだよ。」
と語気が荒くなる。
?
被害者?
「そうだよ、餌ずっとやってたら大変なんだよ」
…お金がか?手間がか?
いやいやいや、無責任な餌やりが子猫を増やしとるんでしょうが、とどのタイミングで切り出すかうかがいつつ、まず話を聞く。
と、その先もおじさまは被害者口調でお話する。
でもこの人と話をできる環境をととのえなければ、この地域猫の成功はない。
聞いたばっかりの知識だが(大体この情報があっているかの検証もしていないし…世の中には諸説あるだろうに。)
・野良猫に餌をやる→栄養状態がよくなる→子猫うまれる→猫増える
・猫が増えないためには、不妊去勢手術が必要→金が必要
と伝える。と。
玄関先をみれば、段ボールに猫の砂のようなもの。
「これは、あの子猫とか野良猫のおうちですか?」
「だって、雨とか降ったときとかさ。本当にこっちも大変なんだよ。被害者はこっちなんだよ。」
おまえらが猫を心配して餌をやっていないから、
おれが餌をやらなきゃって思っているのか?
なんだそれ。
被害者、被害者って…
でも。ここで、ただうなずくわけにもいかず。
まあ、あなたが被害者でもいいですわい、と腹をくくり。
「いや、もう、猫にとって被害者も加害者もないと思うんですけど。
でも、猫にとってとっても責任をかんじていらっしゃるのは、わかりました。
一緒にやりましょう。
とりあえず、今、捕獲して不妊去勢手術しています。で、お金かかるんです。」
「金ならだすよ。」
!
!!
「えっと、猫の糞尿被害を受けてる方にも寄付いただいていて。その方よりは大目にお金をいただきたいです。餌をあげてる責任として。おいくら、カンパしてもらえますか?」
「そりゃ、出すよ」
「じゃあ、2万円はどうでしょうか」
!
って何交渉してるんだろうなあ、とか思ったりしながらも。
餌やってる人は、責任あるでしょうが、あと、実際に体をうごかさないんだから(それぞれ理由はあると思いますが、)出せる人は出して、ください。っという気持ち。
「そんなの2万じゃ足りないよ、ぜんぜんお金すっごくかかるよ。だって、ずっとやるんでしょ?」といなされる。
んなの、しっとるわい!
「ちょっと待って」とおじさんは自宅に引っ込み、すぐにお金を持ってきた。
「ありがとうございます。2万円受け取りました。会計報告書だしますので、ポストにいれておきますね」
といって、帰る道すがら、ふと上をみると、
子猫が3びき、こっちをみている。
あんたたち、あの雨の中、どこにいたのよ…
捕獲の日程を決めなきゃ、そして報告書作らなきゃ、とよろよろ2匹猫を預かっている家に戻る。
今、わかっているだけで、子猫4匹まだいる。